トリプルファイヤー/スキルアップ
面白くて切ない。不安だけど楽しい。トリプルファイヤーというダサダサな名前のバンドのセカンドアルバム「スキルアップ」がとてもいい。
2006年結成、2010年に現在の編成となる。「高田馬場のJOY DIVISION」「だらしない54-71」などと呼ぶ人もいる。ソリッドなビートに等身大の歌詞をのせていてかっこいい。人気がある。メンバーはみな性格が良く、友達が多い。
ニューウェイブぽさのある音数の少ないスッカスカの演奏に、歌ともラップともつかない喋りのようなボーカルが乗る。奇妙で間の抜けた、それでいて不安を掻き立てるギターフレーズと、冗談みたいな詩の世界。この組み合わせは発明だと思った。
特に歌詞が面白い。まず笑わせる気は満々だけどそれだけじゃない。世の中で良しとされてもてはやされているものへの不信感と悪意が、ちまたでよく目にするようなお決まりのうさん臭いフレーズの多用に込められている。そこで語られる様々なものごとについて、けして言葉では否定していないが、曲として聴いたときには完全に批判として響いてきて、まるで全方位へウンコを投げつけるような気持ちよさを感じる。
ライブ映像を観るとボーカルのキャラクターがとてもいい。本気なのかふざけてるのかわからないたたずまい。半笑いで力の抜けた動き。これ、違う人が歌ったら、全然違うふうに聴こえてきちゃうと思う。この演奏でこの詞をこの人が歌うことで、なんだかすごいものが生まれてる。それはみっともなくて恥ずかしくてかっこ悪い。だけどすごくかっこいい。
- アーティスト: トリプルファイヤー
- 出版社/メーカー: アクティブの会
- 発売日: 2014/02/04
- メディア: CD
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